A.1
改正法は、父母の協議により定められた親権者を変更するにあたっては、子の利益のために必要であるか否かを判断するべきとしており、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するとしています(改正民法819条8項)。現在の手続きで、親権者変更が認められるためには、単独親権者の親権行使が相応に不相当である、過去の養育実績、子どもの意向がある等の様々な要素を総合考慮して決められますが、改正後に共同親権にするか否かについても同様の考慮がされると考えられます。
面会交流の実施状況は、一つの考慮要素にはなると考えていますが、それだけを理由に共同親権が認められることはありません。面会交流ができたからといって、共同親権でうまくやれるかどうかは別の問題となりますので、その点を意識して主張する必要があります。逆に、面会交流がうまくいって親子の交流が保たれているなら、更に共同親権にする必要があるのかという疑問も湧いてきます。
共同親権が適用になったからといって、面会交流支援が利用できなくなるということにはなりませんが、そもそも面会交流支援は、双方の合意がなく利用することができないため、それすら合意ができない場合に、当該父母に共同親権を認めることが子どもの利益のためになるのかという点は慎重に検討されるべきでしょう。
A.2
前提として住所秘匿が認められているような関係で、別居親が、同居親の同意なく面会することが子どもの利益にならないような場合に、共同親権になるというのは考えにくいです。このように、協力的な関係が築けていないような場合には、まずは、共同親権にならないように、秘匿の必要性について裁判所に十分理解してもらうことが必要です。
別居親が住所や学校に会いに来ることによって子の利益に反する事態になるのであれば、改めて親権者変更(共同親権から単独親権へ)を申し立てるか(民法819条6項)、子の監護に関する事項(面会交流等)の取り決めを裁判所に申し立てることが良いと思います(民法766条)。
A.3
面会交流が出来るかどうかと、親権者が誰であるかは別の問題です。共同親権が導入され、仮に共同親権者になった場合であっても、面会交流を実施することが可能か否か、お子さんにとって適切か否かということは別途の検討が必要です。
親権とは、未成年の子に対して養育の義務と責任を負い、その義務を果たすために権利を有する法的立場のことを言います。一方で、面会交流とは、未成年の子が心身ともに健やかな成長を遂げるために離れて暮らす親との直接的ないし間接的な交流を持つことであり、子の権利です。このように、面会交流はあくまでも子の権利であり、子の福祉を図る観点から実施の可否等を検討することになります。
お子さんが違法ないし不当に連れ去られてしまったということであれば、まずは速やかに子の引き渡し、監護者指定の申立てを(事案によってはそれぞれの仮処分の申立ても並行して)行うことが必要です。また、それとは別に、面会交流調停の申立てを行い、母親としてお子さんのために何をしてあげられるのか、手続きを通じて手を尽くすことが良いように思われます。
ただし、同居親がDV体質の場合、自分の意見に従わない母親に対して、常識がなく異常な行動をとるなどの人格攻撃をして、子との面会によって子の利益に反する事情があると主張する人が見られます。このような場合には、そもそも共同親権にすることは難しいでしょうし、仮になったとしても、スムーズに面会交流が進むとは思えません。